ドイツでテニスを続けていると、どうしても避けられないのが「移動・遠征」です。

ドイツは車社会で駐在員は会社から車を支給されることが多いですが、現地採用の場合は永住権がないとローンを組むのも難しく、車を所持するハードルは高くなります。
そうなると必然的に、遠征の足はドイツ鉄道(Deutsche Bahn、通称DB)に頼ることになるのです。
ただこのDBが、日本人にとってはなかなかのクセ者。
新幹線の正確さに慣れた身には、トラブルの連続に驚かされること間違いなしです。
今回は、私自身が実際に経験した「遠征での失敗談」と、そこから得た「DBを使うときの注意点」を紹介していきます。
目次
ドイツのリーグ戦での車エピソード
ドイツのクラブリーグ(Medenspiel)は、シーズン中ホーム戦とアウェイ戦があります。
ホーム戦は地元クラブのコートで行われますが、アウェイ戦となると相手チームのクラブまで遠征が必要で、ここでまた移動手段の問題が出てきます。
私の場合は車を持っていないので、アウェイ戦ではチームメイトの車に同乗させてもらうことがほとんどです。
ありがたいことに、ドイツ人の仲間たちは快く乗せてくれるのですが、その車がまた豪華。
ベンツやポルシェといった高級車に揺られながら試合に向かうこともしばしばで、なんだかプロ選手気分を味わえます(笑)。
日本では考えられなかったような「遠征あるある」ですが、こういう一コマもドイツでテニスをするからこそ味わえるユニークな体験です。
車社会の中での現実:電車遠征が生活の一部
ドイツに来てから、DBでの遠征は完全に日常の一部になりました。
最初は「不便だな」と感じたものの、今では「こういうものだ」と割り切って受け入れています。
実際、ICEの車内にはコンセントもあり、私は移動中にブログを書いたり調べ物をすることが多いので、無駄な時間という感覚はありません。
他の人が映画を観たり寝たりしている横で、私は記事執筆。
今では遠征移動が、ある意味“強制的に作られた自分時間”になっています。
チケット制度を使いこなす
ドイツで電車遠征をするなら、チケット制度を理解して使い分けることがポイントです。
特にテニス遠征プレイヤーに役立つのが次の二つ。
ドイツランドチケット(Deutschlandticket、旧49ユーロチケット)
2023年に登場した定額乗り放題チケット。
月額58ユーロ(2025年1月から値上げ)で、RE(快速列車)、Sバーン(都市近郊電車)、Uバーン(地下鉄)、トラム、バスまで、全国ほぼすべてのローカル交通が乗り放題になります。
「隣町での練習試合」「州内クラブでのリーグ戦」など、日常レベルの移動ならこれが圧倒的にコスパ最強。
私自身も近場の試合や練習会には欠かせません。
ただし弱点も明確で、ICEやICといった長距離列車は対象外。
例えばシュトゥットガルトからミュンヘンやフランクフルトに行こうとすると、REを何本も乗り継ぐ必要があり、遅延や接続ミスのリスクが一気に増えます。
安さを取るか、確実さを取るか、割り切りが必要です。
BahnCard(DBカード)
もうひとつの強力な選択肢がBahnCard。年間費を払うことで長距離列車(ICEやIC)の割引が受けられます。
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BahnCard 25:運賃が25%割引。私もこのカードを使っていて、月1〜2回のミュンヘン遠征だけでも十分に元が取れています。
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BahnCard 50:運賃が50%割引。年間費は高めですが、毎週のように遠征や出張をする人ならこちらの方がお得。
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BahnCard 100(小ネタ):究極のカードで、年間費を払えばドイツ国内の鉄道に「ほぼ乗り放題」。会社員の出張族や鉄道ヘビーユーザー用で、テニス遠征目的で持つ人はまずいませんが、「こんな選択肢もある」と知っておくとちょっと面白い制度です。
実際の使い分け
私は「近距離はドイツランドチケット」「長距離はICE+BahnCard25」と完全に使い分けています。
これによってコストを抑えつつも、無駄な遅延リスクを減らすことができています。
遠征を重ねると、こうした小さな工夫が最終的にパフォーマンスや精神的余裕につながっていくのを実感しています。
フランクフルト遠征での失敗:RE乗り継ぎの罠
私がDBの厳しさを痛感したのは、ドイツに来たばかりの頃。
まだ仕事も始まっておらず、節約を兼ねてフランクフルト遠征に「ICEではなくREの乗り継ぎ」で向かいました。
ところが、出発のシュトゥットガルト駅からすでに大幅遅延。
乗り継ぎが崩れてしまい、予定より大幅に到着が遅れてしまったのです。
この経験から「安さよりも確実さ」を学びました。
以来、遠征の際は極力ICEの直通便を選び、乗り継ぎリスクを避けるようにしています。
ミュンヘン遠征での学び:食堂車の存在
毎月のように通っているミュンヘン遠征でも、一度「昼食難民」になったことがありました。
午前の練習後、ついサウナでくつろぎすぎてしまい、気づいたらお昼を食べる時間がなくなっていたのです。
駅の売店に寄る余裕もなく、そのまま予約していた電車に飛び乗る羽目に。
数時間の移動中、お腹を空かせたまま過ごすのは想像以上に辛いものでした。
後から知ったのですが、ICEには食堂車があります。
それ以来、遠征帰りはよく食堂車で食事を取るようになりました。
景色を眺めながら温かい料理を食べる時間は、遠征の小さな楽しみにもなっています。
DBを使うときの注意点
ここまでの経験から、私なりの注意点を整理すると次の通りです。
DB利用際の注意点
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直通便を選ぶ
可能な限りICEの一本ルートを選択。乗り継ぎは極力避ける。 -
遅延は前提でスケジュールを組む
「予定通り着いたらラッキー」くらいの感覚で。試合開始の1時間前には現地に着ける便を選ぶのがおすすめ。 -
DB Navigatorアプリを常にチェック
運行状況は頻繁に変わるため、移動中も逐一更新。 -
座席は早めに確保
時間帯によっては2等車座席がない場合も。早めの座席確保が必須。 -
BahnCardを活用してコスト削減
ICEを避けてREを乗り継ぐより、BahnCard割引で直通便を選んだ方が、最終的には時間も体力も節約できる。
日本との比較:予定通りがラッキー
日本の新幹線は「時間通りに到着して当然」。
一方、ドイツ鉄道は「時間通り着いたらラッキー」です。
テニスの練習や試合前にこの違いを突きつけられるとストレスを感じることもありますが、今では「これも文化の一部」と受け入れるようになりました。
不便さをネタとして笑い飛ばせるかどうかが、海外テニス生活を楽しむコツかもしれません。
おわりに
DBでの遠征は不便も多いですが、その分だけ思い出にも残ります。
フランクフルトでの大遅延や、ミュンヘン帰りの昼抜きエピソードは今では笑い話。
そしてICEの食堂車で食べる一皿は、そんな不便を乗り越えたご褒美でもあります。
大切なのは、「不便を前提に余裕を持って準備すること」そうすれば、遠征も移動も楽しみの一部になります。
これからドイツで遠征に出る方は、ぜひこの現実を頭に入れてスケジュールを組んでみてください。