
ドイツのテニスシーズンといえば「夏のクレーコート」を思い浮かべる人が多いと思います。
実際、5月から7月にかけてはリーグ戦(Medenspiel)やLKトーナメントが盛んに行われ、クラブも最も活気づく季節です。
では、秋から春先にかけての寒い季節はどうしているのでしょうか?
「冬はテニスができないのでは?」と不安になる方も多いでしょう。
実際のところ、ドイツの冬でもテニスを続けることは十分に可能です。
その鍵になるのが、室内コート(Halle)と、冬リーグ(Winterrunde)。
この記事では、私自身の体験を交えながらドイツで冬にテニスを続けるための環境と工夫を詳しく紹介します。
目次
ドイツの冬の気候とテニス環境
ドイツの冬は長く、平均気温は0〜5℃前後。
地域によっては雪が降り、朝は霜が降りることもしばしばです。
屋外のクレーコートは凍結や積雪で使用できなくなり、シーズンオフを迎えます。
クラブによっては9月下旬の時点で屋外コートを閉鎖し、冬用のスケジュールに切り替えるところもあります。
つまり「秋だからまだ外で練習できるだろう」と思っていても、思いのほか早く冬シーズンに突入してしまうのです。
この時期からは、室内コート(Halle)の確保が必須。
秋の終わりと同時に一気に屋外が閉じるため、室内コートの予約争奪戦が始まるのがドイツの冬の風物詩とも言えます。
冬のテニスを支える仕組み:Winterrunde(冬リーグ)
冬のテニスを語る上で欠かせないのが、Winterrunde(冬リーグ)。
毎年10月頃からスタートし、春先の3月頃まで続きます。
夏のMedenspiel(リーグ戦)では「6人制」と「4人制」があり、クラブの規模やカテゴリーによって選択できます。
しかし冬は基本的に4人制。
理由はシンプルで、室内コートの数に限りがあるからです。
多くのクラブが持つ室内コートは平均して3面前後。
6人制だと全試合をこなすのに時間が足りません。
4人制でも3面しかないクラブではシングルスを同時に行えず、2組ずつ順番にプレーすることになります。
こうした事情から、冬は効率的に回せる4人制が基本となっています。
試合形式はシングルス4試合+ダブルス2試合で、夏と同じようにチームで戦います。
規模は夏ほど大きくはないものの、実際には十分盛り上がっています。
私自身も参加しましたが、チームメイトと「冬もこうして集まって試合ができるのはありがたい」と感じる機会が多く、試合勘を維持するためにも欠かせないリーグだと思っています。

室内コートの種類と特徴
冬のテニスで使う室内コートにはいくつか種類があります。
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Teppich(カーペット)
最も多いのがカーペット。球足が速く、スライスはよく滑ります。クラブごとにボールの弾み方やスピードが異なり、慣れるまでは少し時間がかかります。 -
Hartplatz(ハード)
数は多くありませんが、ハードコートも一部あります。クレーとは全く違う弾み方をするため、サーブ中心のプレーヤーに有利な印象です。
私の場合、日本で学生時代にコーチのアルバイトをしていたスクールがカーペットコートだったので、違和感は少なめでした。
ただ、クラブごとに微妙な違いがあるため、試合のときはアップ中にしっかり慣れておくことが大切です。
室内コートの予約事情と料金
冬に悩ましいのが「コート予約問題」です。
クラブによっては会員でも冬は別料金が必要になります。
料金の目安は30分10ユーロ程度。1時間20ユーロ、2時間40ユーロといった形で課金されるケースが多いです。
私が所属していたMusbergのコートでは、30分7ユーロほどで会員価格が適用されました。
田舎にあるためか競争率はそれほど高くなく、数日前に予約すれば利用できることが多かったです。
一方で、現在所属しているDoggenburgは都市部に近く、争奪戦が激しいとのこと。
特に平日の夜はまず予約が取れないそうで、練習仲間とは「人気の少ない日曜午前に練習しよう」と話しているほどです。
予約システムはebusyというオンライン予約システムを導入しているクラブが多く、パソコンやスマホから空き枠を確認してすぐに予約できるのは便利です。
室内コートを活用する工夫
予約が難しい冬の室内コートを有効に使うためには工夫が欠かせません。
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定期枠(Abo)を早めに確保する
シーズン前に申し込めば、毎週同じ時間帯に練習枠を押さえられます。 -
冬はダブルス練習が中心に
夏はコート数が多いためシングルス練習が多くなりますが、冬は限られた面数を効率的に使うため、チーム練習はダブルス中心になることが増えます。実際に私も冬はボレストやフォーメーション練習を重点的に取り入れることが多いです。 -
室内ならではの利点
天候に左右されないので予定通り練習できる、気温や風の影響を受けないためフォームの改善に集中できるなど、良い面も多いです。
コートが取れない日の代替トレーニング
どうしても予約が取れない日もあります。
そんなときはジムに行き、体幹トレーニングや筋力強化をしています。
サーブ動作に近いトレーニングやフットワークドリルを取り入れることで、コートに出られなくてもテニスに直結する練習が可能です。
「テニスをやらない日=休養日」ではなく、「補強日」と考えるのが大事だと思っています。
冬シーズン中のLKトーナメント
冬にテニスを続けられるのはありがたい一方で、デメリットもあります。
まず一番大きいのは大会(LKトーナメント)の少なさです。
夏場は毎週末のように各地でLKトーナメントが開催されていますが、冬はインドアコートを複数所有しているクラブが限られているため、大会開催数が極端に減ります。
私自身、冬シーズンのうちにトーナメントに多く出場し、試合数を重ねてLKランクを上げたいと思っていました。

ところが現実は、
・大会自体が少ない。
・開催しているクラブも郊外が多く車が必須
結果として、思うように大会に出ることができませんでした。
利用可能なインドアコート
冬にテニスを楽しむためには、まず「どのクラブがインドアコートを持っているか」を確認することが大切です。
残念ながら、すべてのクラブがインドアコートを所有しているわけではありません。
むしろ外コートだけのクラブも多いのが現実です。
その場合は、周辺にインドア施設を持っているクラブをビジター利用する、というのが一般的な解決策になります。
地域によっては「クラブAに所属しているけれど、冬は近隣のクラブBのインドアを使う」というスタイルが普通に行われています。
冬のテニスライフを維持するためには、所属クラブ+周辺のインドアクラブを組み合わせて使う発想が必要です。
ビジター利用可能なテニスコート一覧はこちらの記事を参考にしてください。
冬ならではのメリット
ただ、逆に冬にしか味わえない快適さもあります。
冬シーズンのメリット
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天候に左右されない:雨や雪を気にせずテニスができる。
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グリップが汚れない:クレーではグリップがすぐに土で汚れるが、カーペットなら常に清潔。私はグリップが滑りやすいので、冬は巻き替え頻度が減り快適。
こうした「冬の方がいい」と感じる点もあり、意外と冬のテニスを楽しめています。
冬リーグを楽しむための3つの心得
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早めのコート確保
冬は室内コートの数が限られるため、Abo(定期枠)の確保や人気の少ない時間帯を狙う工夫が必須。 -
練習テーマを明確に
ダブルス練習やボレー練習など、冬ならではの練習スタイルに合わせてテーマを決めると効率的。 -
冬の環境を楽しむ
カーペットの快適さ、土で汚れない清潔さ、天候に左右されない安心感。冬にしかない利点を前向きに活かす。
まとめ
ドイツの冬は長く、外コートは早ければ9月末には閉鎖されます。
しかし冬だからといってテニスが止まるわけではありません。
冬には冬のリーグ(Winterrunde)があり、夏とは違うフィールドでプレーする新しいシーズンが始まります。
確かに課題もあります。
インドアの利用料や予約の難しさ、大会の少なさといった制約は避けられません。
それでも工夫して練習場所を確保できれば、冬は冬で十分に楽しめるシーズンです。
私自身、クレーよりもカーペットの方が得意なので、冬リーグはむしろ好きです。
土でグリップが汚れない快適さも含めて、冬ならではの魅力を感じています。
「オフシーズン」や「次のシーズンへの準備期間」ではなく、冬は冬で一つのリーグ戦を思いきり楽しめる大切なシーズン。
そんな風に捉えると、冬のテニスライフが一段と充実するはずです。